サービスQ&A


化学物質管理が見直されたのはなぜ?


国内で使用される化学物質は7万種類を超えていますが、規制されているものは石綿等管理使用が困難な8物質と特化則や有機則等の個別規則に概要する123物質しかありません。

そうした中で、化学物質による労働災害は年間450件程度で推移し、その8割が規制されていない化学物質の使用によるものです。
労働災害が発生して国が規制をすると、規制のない代替物質を利用し十分な対策を講じないことで労働災害が発生するような悪循環となっています。

こうしたことから、国がリスク評価に基づく個別管理から、事業者が取り扱う化学物質を調査(リスクアセスメント)し、ばく露を最小限にする自律型管理に見直されました。

リスクアセスメント対象物質は増えるの?


労働安全衛生第57条の3第1項の規定による化学物質等の危険性又は有害性等の調査等(リスクアセスメントの実施等)を行わなければならない化学物質等は、現在の674物質に加え、234物質が追加されました。
これらはラベル表示、SDS交付も義務付けられています。
(令和6年4月1日施行 基発0224第1号 令和4年2月24日)

なお、令和4年度中に675物質、令和5年度中に827物質の追加が検討され、最終的には約2,900物質になる予定です。

 令和3年度 234物質・・・GHS分類で発がん性、生殖細胞変異原性、生殖毒性、急性毒性のカテゴリで区分1相当の有害性を有する物質
 令和4年度 675物質・・・令和3年度の物質以外で、GHS分類の健康有害性カテゴリで区分1相当の物質を想定
 令和5年度 827物質・・・GHS分類の健康有害性カテゴリで区分1以外の物質を想定

リスクアセスメントの結果に基づく措置とは?


リスクアセスメントの結果に基づき、労働者が対象物質にばく露される濃度の低減措置を行います。
具体的には次のことを行います。

  1. 対象物質の使用を取りやめ、他の危険有害性の低い物質に変更する
  2. 発散源を密閉する設備、局所排気装置や全体換気装置を設置及び稼働(工学的対策)
  3. 作業方法の改善(管理的対策)
  4. 有効な呼吸用保護具の使用

低減措置としては、1番の対象物質の使用を取りやめることが最も効果がありますが、事業活動を行う上で、危険有害性の低い物質に切り替えることも効果があります。
4番の有効な呼吸用保護具は、1から3までの措置ができない場合の最終的な手段です。

また、リスクアセスメント対象物質のうち、一部の物質には濃度基準値が設けられます。
事業者はこれらの物質の製造又は取り扱う業務を屋内作業場で行う場合には当該業務に従事する労働者のばく露濃度を濃度基準値以下とする義務があります。

なお、リスクアセスメントの結果に基づく措置について、以下のことが義務付けられました。
  • 労働者がばく露される濃度の低減措置に対し、関係労働者の意見を聴くための機会を設ける
  • 労働者がばく露される程度を濃度基準値以下にする措置に対し、関係労働者の意見を聴くための機会を設ける
  • 2つの措置の状況について、1年を超えない期間ごとに1回、定期に、記録を作成し、保存すること。
  • 従事する労働者に周知させること

化学物質管理者とは?


(令和6年4月1日施行)

○リスクアセスメント対象物質を製造または取り扱う事業者において選任し、次の職務を行わせる

  1. ラベルやSDSの確認及びリスクアセスメントの実施の管理
  2. リスクアセスメントの結果に基づくばく露防止措置の選択、実施の管理
  3. 化学物質の自律的な管理に係る各種記録の作成・保存
  4. 化学物質の自律的な管理に係る労働者への周知・教育
  5. ラベルやSDSの作成(リスクアセスメント対象物質の製造事業者)
  6. リスクアセスメント対象物による労働災害が発生した場合の対応


○選任義務が発生した日から14日以内に選任しなければならない。

  • リスクアセスメント対象物質を製造する事業場 → 専門的講習の修了者より選任
  • リスクアセスメント対象物質を製造する事業場以外 → 専門的講習の受講は推奨


○化学物質管理者の氏名を事業場の見やすい箇所に掲示すること等により関係労働者に周知すること。

基発0531 第9号 令和4年5月31日
基発0907 第1号 令和4年9月7日( 一部改正)

保護具着用管理責任者とは?


(令和6年4月1日施行)

○リスクアセスメントの 結果に基づく措置として、労働者に保護具を使用させるときに選任する。

  1. 有効な保護具の選択
  2. 保護具の保守管理
  3. その他保護具に化係る業務 ⇒ 防塵マスクの選定・使用についてH18指針他

○保護具着用管理責任者の選任は、選任すべき事由が発生した 日から14日以内に行う。

 保護具に関する知識及び経験 を有すると認められる者

○保護具着用管理責任者の氏名を事業場の見やすい箇所に掲示すること等により関係労働者に周知すること。

基発0531 第9号 令和4年5月31日
基発0907 第1号 令和4年9月7日( 一部改正)

参考:防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について(基発0525 第3号/令和5年5月25日)

作業環境測定結果が第3管理区分になったら?


作業環境測定結果が第3管理区分になった場合、次のことが義務付けられます。

  1. 作業環境の改善の可否及び改善が可能な場合の改善措置について、外部の作業環境管理専門家からの意見を聴くこと。
  2. 作業環境管理専門家の意見より、作業環境の改善が可能と判断した場合、作業環境を改善するために必要な措置を講じ、その措置の効果を確認するための濃度測定行い、その結果を評価すること。

作業環境管理専門家が改善困難と判断した場合等の義務
作業環境管理専門家が、作業環境の改善は困難と判断した場合及び上記2の評価の結果、なお第3管理区分に区分された場合、事業者は、次の措置を講じることが義務付けられます。

  1. 個人サンプリング測定等により対象物質の濃度測定を行い、測定結果に応じて、労働者に有効な呼吸用保護具を使用させること。
    また、呼吸用保護具が適切に装着されていることを確認すること(フィットテスト)
  2. 保護具着用管理責任者を選任し、呼吸用保護具に係る業務を担当させること
  3. 上記1の作業環境管理専門家の意見の概要並びに②の措置及び評価の結果を労働者に周知すること。
  4. 1~3での措置を講じたときは、遅滞なく当該措置の内容について所轄労働基準監督署長に提出すること。

作業環境測定結果が改善するまでの義務
  • 6月以内ごとに1回、定期に、個人サンプリング測定等により特定化学物質等の濃度を測定し、その結果に応じて労働者に有効な呼吸用保護具を使用させること。
  • 1年以内ごとに1回、定期に、呼吸用保護具が適切に装着されていることを確認すること

その他
個人サンプリング法等による濃度測定結果、測定結果の評価、呼吸用保護具の装着確認結果を3年間(粉じんに係る測定結果、評価結果は7年間)保存すること。

参考:作業環境測定の結果、第三管理区分にあたる作業場がある事業場の皆さまへ

具体的に何が変わるの?


大気汚染防止法に基づくばい煙発生施設のボイラーに係る規模要件(大気汚染防止法施行令 別表第1 番号1)が改正されます。
今まで(令和4年9月30日まで)の『伝熱面積10㎡以上』が撤廃され、『バーナーの燃料の燃焼能力』から『燃料の燃焼能力』に変更されます。

新たに規制対象となるボイラーは?


『伝熱面積10㎡未満』かつ『燃料の燃焼能力が50L/h以上(重油換算)』のバーナーを持たないボイラーが新たに規制対象となります。
燃料の燃焼能力について、ボイラーの仕様に係るものである為、設置者を通じてボイラーメーカー等にお問い合わせ頂くことをお勧めします。

小型ボイラーに該当するボイラーはどうしたらいいの?


小型ボイラー(伝熱面積10㎡未満かつ燃料の燃焼能力が50L/h以上(重油換算))については、引き続き(令和4年10月1日以降)、『小型ボイラーに関する排出基準の適用猶予』(昭和60年6月6日総令31)が適用されます。そのため今後(令和4年10月1日以降)設置予定のばい煙発生施設使用届出書を提出する時は、小型ボイラーの該当性の判断に必要なため『伝熱面積』の記入が必要となります。

溶接ヒュームの濃度測定を依頼するには?


測定できる機関とは?

溶接ヒュームの濃度測定は、作業環境測定ではなく、個人ばく露濃度の測定となります。法的に「作業環境測定」ではないため、作業環境測定機関以外でも測定は可能となりますが、個人ばく露濃度測定について十分な知識・経験を有する者により実施が推奨されています。
各都道府県の労働局ホームページや(公社)作業環境測定協会ホームページより、作業環境測定機関を検索できます。なお、測定対象がマンガンのため、作業環境測定機関として(金属類の分析ができる)第4号登録されている機関にご相談ください



測定依頼を相談するには?

業種によっては、金属アーク溶接等作業が異なりますので、ご相談する前に次の点について情報収集をお願いします。溶接ヒュームの濃度測定を計画する情報となります。

  • 溶接作業場所の大きさや配置(建屋のどのあたり)、天井の高さ、換気装置の有無。
  • 溶接作業の内容、頻度、従事する作業者とその人数。同時に作業する人数。
  • 溶接資材のSDS(最新のもの)、使用する部材など。
  • 使用している呼吸用保護具の型式、区分。


既存の金属アーク溶接等作業については、令和4年3月31日までに「溶接ヒュームの濃度測定」を行い、測定結果に応じて、有効な呼吸用保護具を選択し、労働者に使用させる必要があります。
なお、呼吸用保護具の装着の確認(フィットテスト)については、令和4年4月1日より義務付けられていましたが、JISの改正に合わせ、令和5年4月1日からの適用に延期されました。(令和3年1月26日 厚生労働省令第12号)
今後の運用管理について、ご不明な点がありましたら、ご相談ください。

※ リーフレット「金属アーク溶接等作業について 健康障害防止措置が義務付けられます(厚生労働省)」
屋外作業場向け屋内作業場向け